1. 経費に関する不正の手口のディスカッション

旅費交通費や接待交際費(以下、「経費」と総称)に関する監査を題材に、従業員の経費に関する不正の手口をディスカッションし、当該不正の手口に有効な分析シナリオを研究した。

 

<「不正のトライアングル」から、内部統制の脆弱性に着目した不正の手口>

「動機」、「機会」、「正当化」の不正リスクの3要素において、客観的環境である「機会」を見極めて不正を抑え込むことが重要である。そこで、不正行為の実行を可能または容易にする客観的環境=内部統制の脆弱性に着目しつつ、経費に関する不正の手口を検討した。

 

<経費に関する不正の手口>

主に、旅費交通費や接待交際費に関する不正の手口は次のとおり。

旅費交通費に関する不正の手口

接待交際費に関する不正の手口

【虚偽の使途】

私用で使ったタクシー代やホテル代を勤務時の費用として申請

【虚偽の使途】

社員同士や個人的な飲食にかかる領収書を交際費として申請

【水増し請求】

・定期券が高くなるバス通勤で申請

・定期券の区間を除外せずに申請

・最安ルート以外で申請

・割引の料金を適用せずに定価で申請

【水増し請求】

領収書の金額を追記・修正して申請

1桁目などに「1~9」を追記
数字の「1」を「4」や「7」、「9」に修正

【架空精算】

・出張があったかのように見せかけて出張費を申請

・出張時に実家や友人宅に宿泊したが、ホテルを利用したと見せかけてホテル代を申請

【架空精算】

・領収書の不正入手による申請(知人からの譲受け、ゴミ箱などからの拾得など)

・飲食店との共謀により事実と異なる領収書を入手して申請

【多重精算】

一度提出しているタクシー代やホテル代の領収書の写しを、日付や金額を改ざんして再度申請

【多重精算】

一度提出している飲食代の領収書の写しを、日付や金額を改ざんして再度申請

 

これらの不正の手口に対して効果的な分析シナリオを研究した。

また、接待交際費に関する申請書サンプルデータを利用してCAATsを活用した分析シナリオを検討した。

 

2. CAATsを活用した分析シナリオの立案

上記1.の接待交際費に関するサンプルデータを題材に、どのような分析シナリオを立案すべきか、下記の手順に従って研究を行った。

(1)   当協会が提供する仮説検証手続立案のフレームワークを利用して検討し、監査テーマを確定した。

<接待交際に関する監査の背景>

l  接待交際費の私的利用や実態のない接待交際が行われていないことの実態調査

l  得意先との接待交際を通じた不正取引の相談事例があり、当社でもそのような事実が発生していないかどうかの実態調査

 

<確定した監査テーマ>

l  不正や異常な接待交際が行われているリスク

 

検討過程は、接待交際費監査手続立案シート(※1)に記載の通り。

 

(2)   当協会が提供する仮説検証手続立案のフレームワークを利用して、上記(1)の監査テーマを検証するために必要なデータの特定、CAATsを利用した監査手続の立案を行った。

 

<デモデータ(※2)>

l  接待交際費申請書データ

l  接待交際費申請書データに関するテーブルレイアウト  

 

<立案した監査手続例>

@  自己承認申請書分析

A  重複申請に関する分析

B  ベンフォード分析

C  申請者別得意先別分析

D  一人当り精算金額分析  

E  その他

 

検討過程は、接待交際費監査手続立案シート(※1)に記載の通り。

 

(3)   上記(2)で立案した監査手続について、当協会が提供するデータ処理手順書のひな型などを利用して、CAATsツールを利用した監査手続の具体的な手順を計画した。
計画した監査手続の手順は、データ処理・分析手続一覧書(※2)に記載の通り。

(4)   上記(2)で特定した必要なデータをもとに当協会が作成したデモデータ(※2)を利用し、上記(3)のデータ処理・分析手続一覧書に従い、CAATsツールを利用して監査手続を行った。
CAATs
ツールを利用して監査手続については、ACL Analyticsのプロジェクトファイル(※2)をご参照。

 

 

(※1)法人会員、正会員および準会員の方にご覧いただけます。

(※2法人会員および正会員の方にご覧いただけます。

 

 

研究報告の成果物をご自身の業務のヒントとしてご活用いただけますと幸いです。

法人会員の方および正会員の方は、データ処理手順書、ACL Analyticsのプロジェクトファイルおよびデモデータをご利用いただけますので、ACL Analyticsの操作も併せてご確認ください。

 

 

以上