1. CAATsを活用したリスク識別とビジュアライゼーション
監査計画時におけるリスク評価(リスクの高い拠点等の識別)やオフサイト調査におけるデータ活用など、CAATsを活用して計画立案に有効なリスク評価の手続や結果の見せ方を立案する方法を研究した。
<監査計画時におけるリスク評価に有用な手続を検討>
監査の現場においては、監査計画や往査対象の優先順位決めに悩まれていることも多いと思われる。
そこで、本研究会では、各社で採用しているアプローチや悩みを共有しながら、優先順位付けに役立つリスクヒートマップを作成や、CAATsを活用したリスク評価などの具体的な手続を検討した。
また、経営(の期待・関心に応える)監査の実現に向けて、社内外のデータを活用した俯瞰的なリスク評価を行う可能性についても考察した。
<ビジュアライゼーションを活用した往査対象子会社の選定手続>
往査対象子会社を選定するにあたり、各子会社のデータとして比較的容易に取得できる財務情報に着目し、子会社別の財務分析による優先順位決めを実施した。
また、経営監査の実現に役立つデータ活用の可能性も合せて検討した。
検討内容 |
有用と考えられるリスク評価手続 |
個別テーマ監査に向けた事前調査 ・各子会社の概況把握 ・違和感や疑問点の整理 |
個別テーマ監査では、各種の閾値を設定し、財務リスクヒートマップを活用して各子会社の概況を可視化して把握しやすいように実施した。 <例>財務指標による閾値例 ・売掛金回転日数:90日超、120日超 ・在庫回転日数 :60日超、100日超 ・自己資本比率 :50% ・営業キャッシュ・フローがマイナス ・その他、債務超過にあるなど |
監査計画立案の優先順位決め ・往査先子会社の選定 ・往査先子会社の優先順位 |
監査計画立案時においては、個別財務諸表を活用した財務分析を実施してスコアリングし、往査先子会社の選定と優先順位を決める手続を実施した。 <例>活用した財務分析例 ■業績比較(横棒グラフ、散布図による可視化) ・売上高および利益率増減分析(期間比較、会社間比較) ■収益性と資本効率比較(散布図による可視化) ・投下資本利益率と売上利益率の関係 ・運転資本回転率と売上利益率との関係 |
経営監査の実現に役立つデータ活用の可能性検討用 ■監査対象 ■対象リスク=戦略リスク |
経営監査に実現のために、経営のプロセスリスクを「俯瞰的に」捉えるために役立つデータに着目して、当該データを分析するような手続が有用と考える。
✅経営のプロセスリスクを捉えるために役立つデータ例 • 会計財務、勤怠・販売・経費精算など業務システム • CSA(J-SOX)、リスク管理DB(ERM) • 従業員意識調査、コンプライアンス意識調査 • 業界や社会での最近の情勢、リスクの発現など |
なお、公認会計士協会が公表している「監査業務におけるITの活用事例」では、監査計画段階における企業環境の理解において、ITの活用を行うことも記載されている。
これらの検討結果を踏まえて、財務情報サンプルデータを利用してCAATsを活用した往査対象子会社の選定を実施した。
2. CAATsを活用した財務分析の実施
上記1.の財務分析を題材に、往査対象子会社を選定するために、どのような財務分析を実施すべきか、下記の手順に従って研究を行った。
(1) 業績に着目した分析を行うために、損益計算書のデータのうち、売上高、売上原価、営業利益、前年同期売上・営業利益に特化して財務指標分析を実施して各子会社の傾向を把握した。
(2) 収益性と資本効率性に着目した分析を行うために、ROIC(投下資本利益率)と運転資本回転率を算出し、それぞれROS(売上利益率)との関係を考察して、往査対象子会社を選定した。
<デモデータ>
l 財務分析用デモデータ
<実施した財務分析>
ü 各種の財務指標を活用した財務分析
ü リスクヒートマップの作成
ü 横棒グラフや散布図を活用したデータ分析
<財務分析結果>
ü Excelによる財務分析結果(※1)
ü Power BIによる財務分析結果(※1)
(※1)法人会員、正会員および準会員の方にご覧いただけます。
研究報告の成果物をご自身の業務のヒントとしてご活用いただけますと幸いです。
法人会員および正会員の方は、デモデータおよび財務分析結果(ExcelファイルおよびPowerBIファイル)をご利用いただけますので、是非ご確認ください。
※PowerBIを使用できない方向けに、PDF版(※1のファイル)も用意しております。
以上