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活動報告

<太陽有限責任監査法人>「データ・アナリティクス・スペシャリスト」の人材育成に本格的に取り組む!」(1/2)

最終更新日時:2018年05月08日

カテゴリー:

2018年5月9日(水)
太陽有限責任監査法人の監査業務推進部 部長、パートナー 公認会計士の柴谷哲朗先生に、ICAEA JAPANの代表理事弓塲が当協会のサービスを選択された理由や効果、ねらいを伺いました。

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 柴谷 哲朗先生
 太陽有限責任監査法人 パートナー 公認会計士
 監査業務推進部 部長
【略歴】
 平成9年公認会計士登録。現在、太陽有限責任監査法人のパートナー。会計監査業務のIT化・業務改善に取り組んでいる。


—なぜ「データ・アナリティクス・スペシャリスト」人材の育成に本格的に取り組まれたのか

 

 

弓塲:本日はよろしくお願いします。

 

柴谷先生:よろしくお願いします。

 

弓塲:まず、貴法人が「データ・アナリティクス・スペシャリスト」という人材の育成に本格的に取り組む理由をお聞かせください。

 

柴谷先生:今から2~3年前にAI(人工知能)やデータ・アナリティクス、ディープ・ラーニング等が話題に取り上げられるようになり、「すごい時代が来る!」といった印象を受けていました。監査業界としても、こうしたIT化の波を受けて、監査人が職を無くしてしまうかもしれない、といった懸念があがり始めていたと思います。

 

その当時、AI(人工知能)やデータ・アナリティクス、ディープ・ラーニングを専門にしている方々と意見交換を行った際には、世の中においてデータ・サイエンティストが非常に不足しており、そういった人たちがいなければ、データ・アナリティクスやディープ・ラーニングは実現できないというお話もお聞きしました。一方で、日常の監査業務において、そこまで高度な技術を有していなくとも、きちんとした仮説に基づく検証手続を実施できれば、監査業務においてデータ・アナリティクスを利用できる場面も多く、いきなり莫大なコストをかけずに対応する方法もあるのではないかとも考えていました。

 

このことから、当時より「データ・アナリティクス・スペシャリスト」という人材の育成には、ずっと取り組まなければいけないと思っていましたが、なかなか法人内のリソースだけで対応することは困難だと感じていました。然るべきIT投資を行い、人材についても外部への委託のみならず、法人内でも一定のIT人材を採用しなければいけないと思っていたところ、ICAEA JAPANとの出会いがあり、先ほど申し上げたような高度な技術への対応というのは、引き続きチャレンジしていかなければならないものの、日常の監査業務に従事している監査担当者が実施できる分析の手法を確立していくことが重要であり、かつ即効性もあるというイメージに共感させていただきました。その上で、CPA(公認会計士)を「データ・アナリティクス・スペシャリスト」として育成した方が、投資対効果が非常に高いのではないかと考え、取り組みを始めているところです。

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弓塲:ありがとうございます。公認会計士がこの「仮説に基づく検証手続を実施できる技能」を身につけるということは、以前から私も非常に重要だと考えていましたし、特にIT化の波が押し寄せている昨今では、公認会計士自身がこの技能を身につけなければ、監査人に対する社会からの期待に十分に応えることが難しいのではないかと常々、思っていました。

 


弓塲:次に、貴法人では、「データ・アナリティクス・スペシャリスト」という人材を多く有することに優位性があるとお考えのようですが、それはどのような視点でお考えになっているのかお聞かせください。

 

柴谷先生:はい。優位性というのは、『数の上での優位性』だと考えています。日常の監査業務に従事するメンバーが、仮説検証能力を身につけた上で、不正シナリオに基づくデータ分析を日常的に実施できるようになることが効果的な監査につながると考えており、当法人にこういうメンバーが数多く在籍することで、結果的に当法人の優位性が高まっていくと考えています。ハードウエアに投資をするのか、人材というソフトウェアに投資をするのかは極めて高い経営判断になりますが、私共としては誰もが容易にデータ・アナリティクスを活用できる人材育成に投資をしようと考えています。

 

弓塲:つまり、「データ・アナリティクス・スペシャリスト」に求められるスキルを貴法人に所属する全ての監査担当者が身につける世界を実現していくということですね。

 

柴谷先生:はい。その通りです。なかなか、全ての監査担当者というわけには行かないかも知れませんが、目指すべきところはそこだと思っています。

 

弓塲ありがとうございます。

 


弓塲:次に、データ・アナリティクスの利用目的として、リスク評価手続やリスク対応手続の劇的な深化、手続の大幅な合理化、そしてデータ分析結果のビジュアル化という3つを挙げられているようですが、その理由をお聞かせください。

 

柴谷先生:はい、当法人は『社会が監査に何を求めているのか』、つまり、『監査に対する社会的な期待』ということを常に考えています。
会社自身が当たり前のようにデータを分析し、実務に利用していく社会が、5年後、10年後には実現しているかもしれません。そのように考えると、おそらく我々監査人の最終的な役割は不正・誤謬の発見になるのではないかと考えています。

 

弓塲:なるほど。

 

柴谷先生:いずれ、ブロックチェーン技術が社会全体に浸透していくことで、データの改竄が困難となることから、不正ではない通常の仕訳については、そもそも正しいということを会社自らが明らかにできるようになると考えます。この様な前提のもとで監査人が役割を果たせる領域というのは、見積もりの監査や外部との共謀による不正をどのように見抜くかなどといった領域になってくるのではないかと考えています。

 

また、『高品質な監査』というのは、『問題を発見する、間違いや不正を発見する力』と定義することもできますが、『問題や間違いを起こさせない監視としての機能』も概念として含まれていると考えています。イメージとしては、ドライブレコーダーです。ドライブレコーダーは、事故にあったときや不測の事態に備えるという用途で設置する人が多いと思いますが、自分の運転が正しかったことを証明するものでもあります。その結果、スピード違反をしないように気をつけたり、居眠り運転しないように気をつけたりなど、防止機能としても働くということです。
『監査人は様々な視点でデータを監視してますよ』というメッセージが会社の方々に強く伝われば、不正自体を未然に防ぐことができるようになると考えています。

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弓塲:なるほど。

 

柴谷先生:手続の大幅な合理化については、あまり複雑なことは考えていません。現状、手作業で行っているものや、部分的にアシスタントが行っている単純な作業を大幅に合理化できると考えています。CAATsツールの操作履歴から簡単にプログラムを作成するなど、プログラムの再利用や簡単なツール化といったことでも、きっと合理化を達成できるのであろうと思っています。

 

弓塲:ブロックチェーンの技術が社会に浸透してくると、取引記録そのものの適正性は担保されるようになり、そのような中で、監査人に対する社会の期待役割としては、それ以外の領域、具体的には、不正や誤謬の発見にある、非常に興味深い考え方だと思いました。

 

データの歪みやバラつきといった事象に対し、きちんと仮説を立てて日常的に検証していく、それを自動的に行う。そうすることによって、監査人が常にデータをモニタリングしている状況となり、不正を働こうと思った人も、見つかるからやめようと防止につながっていくということですね。

 

柴谷先生:そういうことです。

 

弓塲:大変、興味深い考え方ですね。ありがとうございます。

 

弓塲:では次に、2020年までに、全ての上場クライアントの監査手続に、データ・アナリティクスの手法を取り入れる計画であると伺いましたが。

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柴谷先生:(笑)

 

弓塲:200社以上に、データ・アナリティクスの手法を取り入れるということは、貴法人に所属する監査担当者は、当たり前のようにCAATsツールを使ってデータ分析を行って監査手続を実施する。その前提となる仮説立案ができる人材を育成していきたいということですね。
そういう世界を実現するために、私たちも頑張ります!

 

柴谷先生:はい、是非、よろしくお願いします!!

 

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