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活動報告

<ベルシステム24ホールディングス>「CAATs導入の狙い、効果と今後の課題」(1/2)

最終更新日時:2018年08月30日

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2018年7月13日(金)
株式会社 ベルシステム24ホールディングスの監査部 余郷 雅巳様、高橋 文博様に、ICAEA JAPANの代表理事弓塲がCAATsを導入された経緯や活用方法、当協会に対する期待などを伺いました。

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 余郷 雅巳様
 株式会社ベルシステム24ホールディングス
 監査部 部長
 【略歴】
 20044月株式会社ベルシステム24に入社し法務部門に配属。
 20089月に法務・コンプライアンス部長、2011年より監査部長。
 
 高橋 文博様
 株式会社ベルシステム24ホールディングス
 監査部 マネージャー
 【略歴】
 20042月株式会社ベルシステム24に入社。
 20149月監査部配属、20163月より現職。
 国際認定CAATs技術者(ICCP)、システム監査技術者、内部監査士。
 


—なぜCAATsを導入したのか

弓塲:本日はよろしくお願いします。

余郷様、高橋様:よろしくお願いします。

弓塲:まず、御社の会社概要について簡単に教えていただけますでしょうか。

余郷様:はい。業務内容としては、ご存知の通りコールセンターの受託になります。お客様は、銀行、証券、損保といった金融系から通信キャリアや通販系の会社等多岐にわたります。もともと我々はコールセンターで電話を受ける業務が専門領域だったのですが、商品の発送からアフターフォローやダイレクトメールの発送を含め、パッケージで委託したいというお客様のニーズもかなり高まってきており、その対応も行っています。また昨今では、外資系のお客様も増えてきており、多言語で対応できるサービスも提供しています。

弓塲:現在、従業員の方はおよそ何名くらいいらっしゃるのでしょうか。

余郷様:そうですね、正社員はおよそ1,200名、あと、現場での電話対応にあたるオペレーターを、コミュニケーターと呼んでいますが、およそ26,000名おります。

弓塲:26,000名ですか。

余郷様:はい、コミュニケーターはいわゆる契約社員ということで、従来は有期契約がほぼ100%だったのですが、最近は人材確保が非常に難しいことから、無期雇用化など様々な人事施策を導入しています。正社員といわゆる契約社員の差がなくなりつつありますね。

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弓塲:なるほど。実は先日、高橋様からCAATsを主に労務監査の領域で使われているとお聞きしました。CAATsを使う領域としては色々あると思うのですが、御社で特に労務に注力されている理由を教えていただけますでしょうか。

余郷様:はい。もともと、当社では過重労働やサービス残業など労務管理の領域でコンプライアンス上の課題を抱えておりました。もちろん、内部監査の結果としてそれらの状況を被監査部門にフィードバックして改善に向けた取組みを促してきたわけですが、特にサービス残業については目に見えた成果を出すに至っておりませんでした。

過重労働については、人事主管の勤怠システムで社員ひとりひとりの労働時間を各職場で把握することができましたので、それらの状況に応じて職場単位で改善活動が可能でした。

一方でサービス残業については、実態を把握できる仕組みがなく、内部監査の際に監査部が独自にデータを分析することによってサービス残業懸念者の抽出をしておりました。つまり、監査対象部門は内部監査の一環で懸念情報の提供を受けることができるわけですが、他の部門はそれらの機会がないことから実態把握もできず、当然ながら改善活動もままならない状況が常態化しておりました。

以上のようにサービス残業については、タイムリーに全社の状況を把握することができず、各職場でも実効的なマネジメントができない状況であり、長時間労働やサービス残業が社会問題化するなか、これらの適正化に向けた仕組み作りが喫緊の経営課題となっておりました。

このような状況の中でいろいろと検討したところ、CAATsツール(※1)を導入することで、大量のデータに対して適正にアプローチして、タイムリーに全社的な状況把握ができるだろうということで、まずは労務監査の領域からCAATsの利用を進めていきました。

弓塲:今のお話では、CAATsを導入する1つの動機は、全社、全社員に向けたモニタリングであったということですね。

余郷様:はい、その通りです。

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—CAATsを利用する上で苦労した点

弓塲:実際にCAATsを使う上での課題、苦労した点などはありましたでしょうか。

余郷様:そうですね、モニタリングの仕組みを構築することはできましたが、そのあとのマネジメントに課題があると認識しておりました。

CAATsの仕組みを導入することで、サービス残業の全社的な状況が個々の社員単位で把握することができるようになりましたので、2年ほど前からは全社に対して月次で各事業部や各部門の傾向や長時間のサービス残業が懸念される社員情報などを展開しています。

一方で監査部の取組みとしては情報共有に留まっており、サービス残業懸念者へのヒアリングやサービス残業が確認された社員へのマネジメントなどは職場まかせになっておりました。監査部としても実効性ある取組みに向けて、さらなるステップの必要性を認識しておりましたので、現在では、ヒアリング結果に関する報告を義務化したり、事案の内容によっては人事部門と連携するなど各職場での改善活動にも監査部が積極的に関与しています。

弓塲:なるほど、大量のデータを使って、まずは見える化をしたということですね。今はその次のステップで、その情報を使って、如何にマネジメントしていくかということに取り組んでいる、ということですね。

余郷様:はい、その通りです。

弓塲:人事部門と連携するために必要なデータを作成するという部分で、苦労された点はあるでしょうか。

高橋様:そうですね、弊社では24時間稼働している部門が多く存在し、そうすると、時間の算定において、26時、27時といった深夜部分のカウントが非常に難しくなります。日付も変わりますので一体どこでしきい値を切ればよいかなど、その辺りの取り決めが大変でしたね。深夜残業をされた方でも、例えば26時くらいまでお仕事をして、そこから適正に打刻をして退勤されている方と、そうでない方、つまり日付を跨いでサービス残業をしているような方をどの様にして切り分けをしながら抽出し人事部門と共有するかについて、多くの調整が必要でした。

弓塲:どうやってその課題をクリアされたのですか。

高橋様:テクニカルな面でいえばエージーテックさん(※2)のサポート部門に大変お世話になりました。ACL特有の関数を利用するだけではなく、突合するための作業構築しなければならなかったのですが、その理解が不十分な状態まま自己流で進めてしまうと、結果に不具合が生じます。この部分は、サポートの方の丁寧な協力を得てクリアすることができました。非常に感謝しております。

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弓塲:なるほど。他にも、苦労された点はありますか。

高橋様:そうですね。入退室ログについては、入室と退室の結果だけですので、例えば、たまたま忘れ物をして再度入退室をしただけの方もいますし、本当にサービス残業をしているのかどうかの確認は難しく、どのようにして心証を高めていくのかという点が苦労したところです。

弓塲:それは結局、ケースバイケースというか、個別の事情も勘案しながら、しきい値というか、基準を決めていくということでしょうか。

高橋様:はい。まずは退勤(出勤)打刻時間と退室(入室)ログ時間との乖離が1時間以上といったしきい値で判断しています。また、入退室ログだけでは判断できない場合は、例えば打刻後のPC操作ログの有無を追加確認するなどにより検証しています。とはいえ、弊社の場合、入退室ログだけでも月間800万レコードありますので、検証行為の自動化は大きな課題でした。そこでCAATsツール(※1)を使って、まずは懸念がある部分だけ抽出し、詳細に検討するためのレコードを絞るという作業を行いました。CAATsツール(※1)を利用することで、大量のログデータでもスムーズに突合せ作業ができました。

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弓塲:月次で行われるお仕事だと思いますが、定型的に処理できる部分と、毎月データを眺めながら、しきい値の調整や新たな抽出条件の検討等、非定型的な作業も実施しているということでしょうか。

高橋様:はい。懸念データの判断は結構難しく、退勤打刻と退室ログの時間にしきい値を超える乖離が生じていたとしても、安易にサービス残業をしていると結論付けするのはハレーションを伴います。例えば、時差出勤で早く出社し休憩室等で待機をしている従業員もいれば、業務終了後、休憩室で休息を取る従業員もおります。そうなると、従業員への配慮も必要ですので、しきい値の見直しや抽出条件の変更、懸念データの判定など、労務グループと随時相談をしながら実施しております。

弓塲:社員の人にとってみれば、そのように見られていることについて、ポジティブに感じる部分もあれば、なぜそこまで見られる必要があるのかと感じる部分もあると思いますが、それについてはどのような形でコミュニケーションされているのでしょうか。

余郷様:マネジメント層からモニタリングの目的について丁寧な説明をしてもらうようにしています。その結果、一定の抑止効果が出てきていると実感しております。このモニタリングは3年くらい前からスタートして、全社のデータを見ていますけれど、徐々に懸念される時間の総数が下がってきているという状況があります。当然、各職場のマネージャーもしっかりマネジメントはしているとは思うのですが、やはり各社員が、自分達の勤怠状況がチェックされているのだという意識が、1つの効果になっているのではないかと思います。

弓塲:見られているという意識がコンプライアンスを遵守するという意識の醸成につながっているということでしょうか。明確に効果が見えているのですね。


※1:株式会社ベルシステム24ホールディングス様は、ACL Analytics(開発元ACL Services Ltd.)を導入されています。

※2:ACLを日本で販売している株式会社エージーテックのことを指します。

https://www.acljapan.com

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